7月20日に行われた参議院選挙では、大方の予想通り自民・公明の与党が非改選議席を含めて過半数に到達せず、石破政権に「NO」を突きつけた形になりました。しかし、選挙結果を冷静に見つめると、今後の日本の未来に対する違った視点を得ることができます。## 過半数割れしたものの与党は想定より善戦今回与党は過半数割れとなり、選挙前の目標を下回る結果となりました。しかし、結果を見ると過半数を下回ったとは言えわずか3議席であり、民意は与党を完全に見限ったわけではないことがわかります。本来与党の批判票の受け皿になるべき野党第一党の立憲民主党も獲得議席は横ばいにとどまり、与党の批判票を取り込むことができませんでした。与党政治には不満があるが、野党に任せようとも考えていないバランス感覚の結果だと考えられます。## 躍進する新興政党は世代交代の象徴今回大きく躍進したのが国民民主党と参政党です。どちらも30代以下の若い世代の支持を集め、SNSを中心としたネット選挙で知名度を上げ支持率を高めました。比例区の得票数では自民党に続いて国民民主党、参政党の順となり、新興の2党が立憲民主党を超えたのは想定外の驚くべき結果です。国民民主党が党首の不祥事と参議院選挙の候補者選びで迷走したことで、参政党へ票が流れた側面もあるようです。いずれにしても、選挙に無関心と言われていた若い世代が投票に向かい、全体の投票率も上昇した事は政治の世界の世代交代を促進する良い傾向です。## 公約実現できなければ期待は失望に躍進した新興政党ですが、熱狂的なブームから短期の政策実現期待が高まっています。選挙前の公約が実現できなければ、期待が一気に失望に変わりその支持を急速に失うリスクがあると思います。少数議席の中で政策をどのように実現していくか。現実的な対応がトーンダウンと捉えられ、支持者が離反していく可能性もあります。## 現実を直視し始めた日本の有権者今回のもう1つの特徴は共産党、社民党など旧来の左派の政党の苦戦も目立ったことです。これは、理想主義的な政治よりも現実的な解決案を期待する有権者が増えたことを意味すると思います。政治を自らの生活と直結させるものとして捉えていることがわかります。## 財源なき財政拡大でインフレ進行は不可避選挙の争点では、各党ともインフレ対策を大きなテーマとして打ち出しましたが、自民党は給付金を政策として提案。野党の消費税引き下げを始めとする減税案と対立しています。また、野党の中でも消費税をどこまで引き下げるかに関して、その対象や引き下げ率についても足並みは揃っていません。与野党に共通するのはインフレに財政拡大で対応しようとしていることです。しかし、これは需要拡大政策ですから、インフレを抑制するよりインフレを加速させることになるのは明らかです。最終的にどのような政策が実施されるかはまだ不透明ですが、財源なき財政拡大は問題解決よりも、悪化を招く可能性が高いのではないかと危惧しています。## 悪い金利の上昇と円安のリスクが増大そして、何より問題は財政拡大によって国債の増加懸念から長期金利の上昇圧力が高まることです。また日本の信用リスクの高まりは、円に対する信任の低下を招き、円安リスクを高めると考えます。## 日本の明るい未来の兆しとリスク世代交代が進み、政治に現実的な政策提案と実行力が求められるように変化したのは、日本の未来への明るい兆しと捉えることができます。政治の実行力が問われています。一方で財政赤字問題の先送りは、将来大きなしっぺ返しを受けるのではないかと懸念しています。個人投資家は円安とインフレに引き続き警戒しておくべきです。円の預貯金を保有しているのが最大のリスクという状況は変わらないと思います。
参議院選挙の結果から垣間見える「日本の未来とリスク」 | 内藤忍の「お金から自由になる方法」 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
7月20日に行われた参議院選挙では、大方の予想通り自民・公明の与党が非改選議席を含めて過半数に到達せず、石破政権に「NO」を突きつけた形になりました。
しかし、選挙結果を冷静に見つめると、今後の日本の未来に対する違った視点を得ることができます。
過半数割れしたものの与党は想定より善戦
今回与党は過半数割れとなり、選挙前の目標を下回る結果となりました。しかし、結果を見ると過半数を下回ったとは言えわずか3議席であり、民意は与党を完全に見限ったわけではないことがわかります。
本来与党の批判票の受け皿になるべき野党第一党の立憲民主党も獲得議席は横ばいにとどまり、与党の批判票を取り込むことができませんでした。
与党政治には不満があるが、野党に任せようとも考えていないバランス感覚の結果だと考えられます。
躍進する新興政党は世代交代の象徴
今回大きく躍進したのが国民民主党と参政党です。どちらも30代以下の若い世代の支持を集め、SNSを中心としたネット選挙で知名度を上げ支持率を高めました。
比例区の得票数では自民党に続いて国民民主党、参政党の順となり、新興の2党が立憲民主党を超えたのは想定外の驚くべき結果です。
国民民主党が党首の不祥事と参議院選挙の候補者選びで迷走したことで、参政党へ票が流れた側面もあるようです。
いずれにしても、選挙に無関心と言われていた若い世代が投票に向かい、全体の投票率も上昇した事は政治の世界の世代交代を促進する良い傾向です。
公約実現できなければ期待は失望に
躍進した新興政党ですが、熱狂的なブームから短期の政策実現期待が高まっています。選挙前の公約が実現できなければ、期待が一気に失望に変わりその支持を急速に失うリスクがあると思います。
少数議席の中で政策をどのように実現していくか。現実的な対応がトーンダウンと捉えられ、支持者が離反していく可能性もあります。
現実を直視し始めた日本の有権者
今回のもう1つの特徴は共産党、社民党など旧来の左派の政党の苦戦も目立ったことです。これは、理想主義的な政治よりも現実的な解決案を期待する有権者が増えたことを意味すると思います。
政治を自らの生活と直結させるものとして捉えていることがわかります。
財源なき財政拡大でインフレ進行は不可避
選挙の争点では、各党ともインフレ対策を大きなテーマとして打ち出しましたが、自民党は給付金を政策として提案。野党の消費税引き下げを始めとする減税案と対立しています。
また、野党の中でも消費税をどこまで引き下げるかに関して、その対象や引き下げ率についても足並みは揃っていません。
与野党に共通するのはインフレに財政拡大で対応しようとしていることです。しかし、これは需要拡大政策ですから、インフレを抑制するよりインフレを加速させることになるのは明らかです。
最終的にどのような政策が実施されるかはまだ不透明ですが、財源なき財政拡大は問題解決よりも、悪化を招く可能性が高いのではないかと危惧しています。
悪い金利の上昇と円安のリスクが増大
そして、何より問題は財政拡大によって国債の増加懸念から長期金利の上昇圧力が高まることです。
また日本の信用リスクの高まりは、円に対する信任の低下を招き、円安リスクを高めると考えます。
日本の明るい未来の兆しとリスク
世代交代が進み、政治に現実的な政策提案と実行力が求められるように変化したのは、日本の未来への明るい兆しと捉えることができます。政治の実行力が問われています。
一方で財政赤字問題の先送りは、将来大きなしっぺ返しを受けるのではないかと懸念しています。
個人投資家は円安とインフレに引き続き警戒しておくべきです。円の預貯金を保有しているのが最大のリスクという状況は変わらないと思います。